Smile Engineering Blog

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The Continuing Story of Error Correction Code 6

行列

はじめに

ここまでの記事で4ビットの送信語、 D_{4} D_{3} D_{2} D_{1}から単一パリティ符号やハミング符号を生成する、ということを考えてきました。
今回からはこれらの符号生成などを行列を使って表現する、ということをやってみたいと思います。
ところで行列、やったことありますか?
昔は高校の数学(数C、だったかな・・・)でも行列を扱っていましたがゆとり教育のあたりから高校では扱わなくなっていたんですね。
これが最近、国の「AI戦略」とやらで高校数学に復活するという話も出ていますね。
そんなこんなで行列、基礎からやってみましょう。
ただし、必要なものを必要なときにやっていく、という方向にしておきます。
まずは送信語を符号語に変換する、という部分を行列で表現できるようになりましょう。

そうだ、焼き鳥屋に行こう

とりあえず、焼き鳥屋に行ってビール飲みながら焼き鳥でも食べましょう。
お品書きは・・・

品名 値段
生ビール 500円
日本酒(一合) 300円
ねぎま 80円
きも 100円
なんこつ 100円
はつ 90円
かわ 80円

とりあえず生ビールね、さて何食べようかしらん。 あぁ、これが伝票ね。

品名 値段 注文数 小計
生ビール 500円 1 500円
日本酒(一合) 300円 0 0円
ねぎま 80円 0 00円
きも 100円 0 0円
なんこつ 100円 0 0円
はつ 90円 0 0円
かわ 80円 0 0円
合計 500円

生ビール来たよ、じゃあやきとりの注文ね。
ねぎま、きも、それからかわを2本ずつ。

品名 値段 注文数 小計
生ビール 500円 1 500円
日本酒(一合) 300円 0 0円
ねぎま 80円 2 160円
きも 100円 2 200円
なんこつ 100円 0 0円
はつ 90円 0 0円
かわ 80円 2 160円
合計 520円

伝票が2枚ありますが、この計算を式で表すと


(500円×1+300円×0+80円×0+100円×0+100円×0+90円×0+80円×0)\\
+(500円×0+300円×0+80円×2+100円×2+100円×0+90円×0+80円×2)\\
=(500円+0円+0円+0円+0円+0円)+(0円+0円+160円+200円+0円+160円)\\
=500円+520円\\
=1020円

となります。
これを行列で表してみます。

お品書き行列

まずはお品書きを行列で表します。
[と]あるいは(と)の間に値段を並べていきます。
この記事では[と]を使用して書いていきます。
それぞれの値段の区切りにカンマなどは使わないでスペースで区切っていきます。 一番左の列が生ビール、2番目の列が日本酒、3番目の列がねぎま、とお品書きの順番に単価をならべていきます。


\begin{bmatrix}
生ビールの単価 & 日本酒(一合)の単価 & ねぎまの単価 & きもの単価 & なんこつの単価 & はつの単価 & かわの単価
\end{bmatrix}

 
メニューの種類は7種類なので1行7列の行列になります。
実際の単価を入れた行列は以下のようになります。


\begin{bmatrix}
500 & 300 & 80 & 100 & 100 & 90 & 80
\end{bmatrix}

とりあえず生ビール伝票行列

最初に注文した生ビールの伝票を行列にしてみます。 こちらは注文数を縦にならべていきます。
一番上の行が生ビール、2番目の行が日本酒、3番目の行がねぎま、とお品書き行列の列に並べた順番と同じにします。


\begin{bmatrix}
生ビールの注文数\\
日本酒(一合)の注文数\\
ねぎまの注文数\\
きもの注文数\\
なんこつの注文数\\
はつの注文数\\
かわの注文数
\end{bmatrix}

 
メニューの種類は7種類なので7行1列の行列になります。
とりあえず生ビールの行列は以下のようになります。


\begin{bmatrix}
1\\
0\\
0\\
0\\
0\\
0\\
0\\
\end{bmatrix}

最初の食べ物オーダー伝票行列

最初に頼んだ焼き鳥の伝票も行列にしておきましょう。
とりあえず生ビール伝票行列と同じように縦に注文数をならべていきます。


\begin{bmatrix}
0\\
0\\
2\\
2\\
0\\
0\\
2
\end{bmatrix}

伝票を1枚にする

今、とりあえず生ビールの伝票と最初の食べ物オーダー伝票の2枚の伝票がありますが、面倒なので1枚の伝票にまとめてしまいましょう。
行列の足し算を行います。


\begin{bmatrix}
1\\
0\\
0\\
0\\
0\\
0\\
0\\
\end{bmatrix}+
\begin{bmatrix}
0\\
0\\
2\\
2\\
0\\
0\\
2
\end{bmatrix}=?

 

行列の足し算をどうやってやれば良いのか説明していませんが、話の流れからして各メニューごとの注文数を足し算すればよさそうですね。


\begin{bmatrix}
1\\
0\\
0\\
0\\
0\\
0\\
0\\
\end{bmatrix}+
\begin{bmatrix}
0\\
0\\
2\\
2\\
0\\
0\\
2
\end{bmatrix}=
\begin{bmatrix}
1\\
0\\
2\\
2\\
0\\
0\\
2
\end{bmatrix}

行列の足し算は各行列の同じ位置の要素を足すだけです。
足し算をするためには足す行列と足される行列の行数、列数が一致している必要があります。
ここではどちらも7行1列の行列なので足し算を実行することができます。
さて、これで伝票を一枚にすることができました。
次は行列で合計金額を計算してみましょう。

合計金額を求める

合計金額を求めるになどうしたら良いでしょうか。
普通に計算するなら


合計金額 = 生ビールの単価 × 生ビールの注文数 + 日本酒(一合)の単価 × 日本酒(一合)の注文数 + ねぎまの単価 × ねぎまの注文数 
+ きもの単価× きもの注文数+ なんこつの単価 × なんこつの注文数 + はつの単価 × はつの注文数 +かわの単価 × かわの注文数

 
ですよね。 これを行列で表現します。
まず、お品書き行列をおき、お品書き行列に伝票行列をかけます。


\begin{bmatrix}
生ビールの単価 & 日本酒(一合)の単価 & ねぎまの単価 & きもの単価 & なんこつの単価 & はつの単価 & かわの単価
\end{bmatrix}×
\begin{bmatrix}
生ビールの注文数\\
日本酒(一合)の注文数\\
ねぎまの注文数\\
きもの注文数\\
なんこつの注文数\\
はつの注文数\\
かわの注文数
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
合計金額
\end{bmatrix}

 
行列で掛け算を行う場合も普通に計算する場合と計算方法は同じです。
実際の値を入れて計算してみましょう。


\begin{bmatrix}
500 & 300 & 80 & 100 & 100 & 90 & 80
\end{bmatrix}×
\begin{bmatrix}
1\\
0\\
2\\
2\\
0\\
0\\
2
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
(500 × 1) + (300 × 0 ) + (80 × 2) + (100 × 2) + (100 × 0) + (90 × 0) + (80 × 2)
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
+500 + 0 + 160 + 200 + 0 + 0 + 160
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
1020
\end{bmatrix}

それぞれの小計(単価×注文数)を計算して、小計をすべて合計する、それだけですね。
行列の掛け算では掛けられる行列(ここではお品書き行列)の列数(ここでは7列)と掛ける行列(ここでは伝票行列)の行数(ここでは7行)が一致している必要があります。
そりゃそうですよね、伝票の8行目に注文数2と書いてあってもお品書き行列には8列目はないのだから一体何を注文したのかわからないですもんね。


\begin{bmatrix}
500 & 300 & 80 & 100 & 100 & 90 & 80
\end{bmatrix}×
\begin{bmatrix}
1\\
0\\
2\\
2\\
0\\
0\\
2\\
2(何を2個注文したの・・・?)
\end{bmatrix}\\

 
これだけでは普通に計算しているのと変わらないので2枚の伝票から計算してみましょうか。

伝票2枚バージョン

先ほどは2枚の伝票行列を足して1枚の伝票で計算しましたが伝票行列を2枚に分けてから計算してみましょう。
2枚の伝票を行列で表す場合、2列に並べて一つの行列とします。
1列目がとりあえず生ビール伝票、2列目が最初の食べ物オーダー伝票です。


\begin{bmatrix}
1 & 0\\
0 & 0\\
0 & 2\\
0 & 2\\
0 & 0\\
0 & 0\\
0 & 2
\end{bmatrix}

 
お品書き行列に伝票行列2枚バージョンを掛けてみます。


\begin{bmatrix}
500 & 300 & 80 & 100 & 100 & 90 & 80
\end{bmatrix}×
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
0 & 0\\
0 & 2\\
0 & 2\\
0 & 0\\
0 & 0\\
0 & 2
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
(500 × 1) + (300 × 0 ) + (80 × 0) + (100 × 0) + (100 × 0) + (90 × 0) + (80 × 0) & (500 × 0) + (300 × 0 ) + (80 × 2) + (100 × 2) + (100 × 0) + (90 × 0) + (80 × 2) 
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
+500 + 0 + 0 + 0 + 0 + 0 + 0 & 0 + 0 + 160 + 200 + 0 + 0 + 160
\end{bmatrix}\\
=\begin{bmatrix}
500 & 520
\end{bmatrix}

 
はい、こんな感じになります。
先ほどと異なり答えは1行2列の行列になってますね。
そして、答えの1列目はとりあえず生ビール伝票の合計金額、2列目は最初の食べ物オーダー伝票の合計金額です。
行列の掛け算では答えの行列は掛ける行列(ここでは伝票行列2枚バージョン)の列数(ここでは2列)となります。
このため、伝票1枚のときの答えの行列は1列になっているわけです。